GREEN SALANA vol.6
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◎線香の製造工程「盆切り」専用の機械に原料を入れ、ジョウロ状の穴から線上に日本一の線香生産地・淡路島「香りに愛された島」に伝わるこだわりの線香お気に入りの香りで日常に心地よさを国生み神話や玉ねぎなどの特産品で知られる淡路島。実は、日本一の線香生産量を誇り、線香製造の本場でもあります。西海岸に位置するお香の町・江井には伝統的な製法を守り続ける線香製造元がずらり。各製造元にはお香の調合から仕上げに至るまでの一切を管理する香りのマイスター「香司(こうし)」がおり、磨いた技と誇りを以って妥協のないお香を作り上げています。今回は明治38(1905)年に創業したお香の老舗「淡路梅薫堂(あわじばいくんどう)」を訪ねて四代目を務める矢野孝幸さんにお話を伺うとともに、匂袋づくりを体験してきました。AwajiBaikundo「香司」が淡調路合島すのるお香江戸時代に泉州堺の職人から技術が伝わったことが起源という淡路島の線香製造。線香の乾燥に適した西風を受けやすい気候や原材料の搬入に便利な立地、一つのことに専念できる人々の気質などが相まって発展したといいます。奇しくも島内には日本最古の香木伝来の地とされる「枯木神社」も鎮座しています。淡路島は古来より香りに愛された島であったといえるでしょう。兵庫県線香協同組合が認定する香司         のような気持ちになってもらいたいか思いの一人として、お香の奥深い魅力を追求する矢野さん。「お香は料理と一緒。相手にどを馳せつつ、いろいろな材料をブレンドして作るんです」と語ります。各製造元には独自の香りを生み出す秘伝のレシピが伝わっており、淡路梅薫堂は仏様が好まれるという希少な甘茶を用いた「甘茶香」などを製造しているとのこと。毎日お供えする線香は、ご先祖様の食事に当たります。そのため、同じものを形式的にあげるのではなく、ご先祖様を思いやりながら選んだ線香をお供えするとよいそうです。なお、厳選した材料と徹底的な品質管理によって製造された淡路梅薫堂の品々は、ご先祖様に供えれば線香に、玄関先などで楽しめばお香になります。近年は安価な商品を容易に買い求めることもできる線香。しかし、職人がこだわり抜いて仕上げた線香は機縁をもたらし、人々を良い方向へ導いてくれるといいます。一口に白檀(びゃくだん)と言っても、その香りは製造元や原料の産地などによって全く違うのだとか。淡路島の線香には職人たちのさまざまな思いが反映されているのです。お香の代表的な原料には白檀・沈香(じんこう)・伽羅(きゃら)などがあります。沈香はその名の通り浮いた気持ちを沈めてくれる香りとのこと。香りには人々の気持ちを沈静させたり、逆に高揚させたりする作用があり、目的やシーンによって使い分けるとよいそうです。「お線香は振る舞いに化粧をするものなんです」と解説してくれた矢野さん。思いを込めて作られた香りは心に届き、所作や言葉遣いにまで影響を及ぼして、人々を内から装ってくれるといいます。お守りのようにして手元に置いておきたいお気に入りの香り。お香は燃やすだけでなく、コップに立ててディフューザーのように使うなど、幅広い楽しみ方ができます。江井工場に足を運べば各種体験を通じてオリジナルの香りを調合することも可能。今回は、さまざまな香料の中から好みのものを配合して、西陣織の袋に詰める「大人の匂袋づくり」を体験しました。用意されたレシピを参考に香料を配合。スプーンを使って好みの袋に詰めていくと、まさにさじ加減ひとつで無限に広がるオンリーワンの香りが仕上がります。甘い香りに真反対の香りを混ぜると甘さが引き立つことも。組み合わせの妙を味わいながら作業します。完成した匂袋は2年ほど香りが持続するそう。香りが弱まった後も火で焚けば最後まで堪能できます。自身の内面やご先祖様と向き合う一助となり、日々の生活をより心地よいものにしてくれるお香。ぜひ好みの香りを探してみてください。枯木神社02ほのかに甘い香りが特徴の淡路梅薫堂の定番お香。仏壇用だけでなく、リラックスや瞑想にも最適。5種類の色と香りから選べる。匂袋づくり、お線香職人、お香づくりの3つの体験プログラム(要予約)を受付中! 詳しくはお問い合わせください。それぞれ好みの香りに完成した匂袋65〜75本押し出す。この工程で、線香の太さが決まる。日本最古の香木伝来の地推古天皇時代に淡路島の海岸に漂着した香木を祀る、日本書紀にも記される由緒ある神社。子宝石などのご利益がある石も祀られ、訪れる人々に癒しと歴史を感じさせる場所となっている。淡路梅薫堂 江井工場兵庫県淡路市江井2738-2 TEL.0799-86-0065兵庫県淡路市尾崎220淡路梅薫堂株式会社香司Yano Takayuki甘茶香矢野 孝幸さん

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